
“ネット銀行”の住宅ローンってどうですか?
たまにお客様からご質問をいただきます。
タイトルにもしておりますが
「インターネットを見ていると”ネット銀行”の住宅ローンが良さそうに思うのですが、どう思いますか?」というものです。
良いか悪いかはお客様の状況によって異なりますので明言できませんが、ひとつ言える事は
当社のお客様で”ネット銀行”を利用されたのはたった一組しかいないという事です。
これには幾つかの要因があります。
“ネット銀行”はある程度の知識レベルが求められる
ほとんどのお客様が住宅ローンを組むのは初めてです。
当然、金融と不動産の両方を理解されている方は少ないため、我々のような仲介業者や銀行の担当者のような黒子の役目が必要とされるのです。
そんな中、ネット銀行の手続きは基本的にご本人がウェブ上・書類の郵送で手続きを進めます。
もちろんQ&Aやサポートセンターはありますが、ウェブ上で必要項目を入力し、送られてきた書類に必要事項を記入し、さらに必要書類を完璧に揃えるという一連の手続きを自分一人でやり遂げられる人が一体どれぐらいいるのでしょうか?
インターネットで住宅ローンと聞くと、一見簡単そうに思えますが、実際には申し込んだ後に挫折してしまう人がほとんどでした。
最近はウェブ審査後に担当者に面談したりできるようですが、ウェブと書類郵送だけではなかなか最後まで辿り着かないのだと思います。
当社でたった一組、ネット銀行の住宅ローンを利用されたお客様は生命保険会社勤務のお客様でした。
金融の知識に長けた方でしたので、トラブルなく引き渡しまで完了しましたが、なかなか出来る人は少ないんじゃないでしょうか。
“ネット銀行”だとスケジュールが読みづらい
当社が取り扱っている多くの物件が「分譲住宅=建売住宅」になります。
完成している建売住宅は契約から引き渡しまでの期間が概ね4週間となります。
つまり、物件の契約をした後に必要書類を揃えてローンの本申込、さらに本承認後に金銭消費貸借契約、さらに実行というスケジュールを約4週間以内に済まさなければなりません。
通常は仲介業者や銀行担当者がスケジュールを組み立てて期日通りに融資実行まで持っていくのですが、ネット銀行はあまりこちらのスケジュールを考慮する雰囲気はなく、融通は利かないというイメージです。
①で説明したように手続きは郵送でやり取りとなりますので、一つミスがあれば再度郵送でのやり取りが発生するため予定したスケジュールは後ろにズレてしまいます。
スケジュール延期の責任を銀行に持っていくわけにはいかないため、責任の所在はお客様という事になってしまいます。
他方、銀行の担当者の面前で書類を記入する場合は、書類の書き方も説明があり、記載ミスなども基本的にその場でチェックするため、手続きをやり直す事は極めて稀です。
手続きにミスがあったとしても責任の所在は銀行となるケースがほとんどで、お客様に悪意がない限り、お客様が責任を被る事はまずありません。
指定司法書士問題
多くのハウスメーカーが所有権移転登記の手続きを担当する司法書士を指定しております。
これは物件が多いため、特定の司法書士に任せておかないとトラブルの元になる理由があります。
他方、抵当権設定をするネット銀行側にも融資先が全国多岐に渡るため、特定の司法書士に任せておかないとトラブルの元になるという理由から司法書士が指定になるケースが多いです。
この指定制度は両社ともに鉄の掟に近いため、所有権移転は売主指定司法書士、抵当権設定は銀行指定司法書士と分けて依頼する事になります。
一般的な金融機関の場合は売主指定の司法書士に抵当権設定も依頼しますので、当然ですが2人の司法書士に依頼するよりは割安になります。

そこまでメリットがあるのか
これを書いている時点で調べたところ、変動金利で0.41%という数字がありました。(2020年9月)
この金利が低いのか高いのか、と聞かれると迷いなく低いと答えます。
では金利が低いにもかかわらず、なぜ利用される方が少ないのか、というと
団体信用生命保険の保証内容にあると思います。
金利も低いとは思いますが、名古屋の銀行はほぼ近いところまで金利引き下げができますので、団信の保証内容まで細かく詰めて見ていくと選ぶメリットは感じません。
メインとなる顧客層のズレ
残念ながら収入が低い方や勤続年数が短い方など、ローンが通りにくい人は低い金利で借りるのは難しいです。
他の銀行で好条件が出なかった方がネット銀行の低金利に希望を見出す気持ちは分かりますが、まず満額借りられないと思った方が良いです。
代わりにフラット35を提案されるのがお決まりのパターンだと思います。
逆に安定した収入があり他の銀行から好条件が出ている方は④の理由からも、あえてネット銀行を選ぶメリットが無いように思います。
というわけで、ぴったりと当てはまる層が不在。
ただし、上記の説明は愛知県に限定した話であり、他府県では話が変わってきます。
愛知県は全国的にも非常に住宅ローンの金利が低いエリアだそうです。
そのため、各銀行の住宅ローン金利がネット銀行の金利に肉薄する勢いなんだそうです。
他府県の場合はネット銀行を活用するメリットがもっと大きいと思われます。
住宅ローンの銀行選びに迷ったら素直に不動産業者に聞く事をおすすめします。
たまに紹介料などのキックバックをもらっていると勘ぐってくる方がおりますが、実際は悲しいほど何もありません。
不動産屋は物件を買ってもらうのが仕事なので、少しでも良い条件を提案しないといけません。
ここが本質だと分かれば不動産屋に聞いて損はないとご理解いただけるかと思います。
それでは皆様に素敵な家が見つかりますように。